このページはPR・広告を含みます

MEDICAL COLD CHAIN REPORT

GDPと温度管理の
基本制度

温度の規定、記録の義務、確認のしかた。医薬品流通の品質を支えるルールを、条文と厚労省資料の引用に基づいて整理します。

  • PIC/S GDPを踏まえた国内基準
  • 温湿度管理と記録
  • 保存温度の区分
温度管理システムの監視画面と、記録を書き込む用紙とペン
SOURCE MHLW / PIC/S GDPUPDATED 2026-10-30

最終更新日:

医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインとは何か

GDP(Good Distribution Practice、適正流通基準)は、製造段階を離れた医薬品が流通の間に品質を保つための基準です。国内では、医薬品産業強化総合戦略(平成27年9月4日)でPIC/SのGDPに準拠した国内GDPの策定が示され、以降、厚生労働行政推進調査事業として検討が続けられました。その成果として、平成30年12月に「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」が取りまとめられ、同月28日に事務連絡が発出されています(厚生労働省 医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン(PDF)/同 事務連絡(PDF))。

このガイドラインが扱う主な項目は、品質マネジメント、温湿度管理、苦情・返品・偽造の疑いのある医薬品および回収、施設および機器、文書化、職員、業務の実施、外部委託業務といった範囲です。薬事日報の報道も、GDPガイドラインが品質マネジメント、苦情・返品・偽造の疑いのある医薬品および回収、施設および機器、文書化、職員、業務の実施、外部委託業務など幅広い規定を含んで整理しているとして述べています(薬事日報の解説記事)。

加えて、ガイドラインの運用を補足する「医薬品適正流通(GDP)ガイドライン解説書」が各条の意図や確認の考え方を解説しています。大阪府の公表資料でも、平成30年12月28日に厚生労働省より示されたと紹介され、PIC/SのGDPを踏まえた国内GDPとして位置づけられています(医薬品適正流通(GDP)ガイドライン解説書(大阪府公表PDF))。

[PR]

保存温度の区分:流通の語彙と薬局の運用温度帯

医薬品の添付文書で「冷所」「常温」「室温」「凍結厳禁」のように表されていた温度条件は、法律の周辺資料と日本薬局方で整理されています。医薬品の保管を定める薬機法と施行規則の体系は、厚生労働省が施行規則の全文を公表しています(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(厚生労働省公表ページ))。日本薬局方には、室温(1~30℃)、常温(15~25℃)、「冷所」(温度15℃以下の場所)といった温度に関する語の定義が含まれており、添付文書の保存条件はこの語彙で表記されています。

実際の機器・運用のレベルでは、この区分をさらに細かい温度帯に分けて扱います。代表的な例が次の通りです。

[PR]
  • 2~8℃:冷蔵保存が必要な医薬品・ワクチン類を会話で「2〜8℃」と示す慣用が薬局の実務や機器の公表で確認され、薬局用冷蔵庫の設定温度帯として広く知られています。
  • 1~15℃:「冷所」の範囲に合わせた温度帯です。氷点下を避ける最低温度として管理対象になる温度帯です。
  • 15~25℃:「常温」の温度帯で、気温の変動に合わせて空調で管理する場所を指します。
  • 30℃以下:「室温」(1~30℃)の上限が30℃のため、常温保管の医薬品で実務上30℃以下に収める運用が想定されます。

なお本ページは医薬品の保存・使用に関する助言を行うサイトではありません。個別の医薬品の保存条件は添付文書・厚生労働省・各自治体の公式情報、個別的な判断は薬剤師等の専門家でご確認ください。

温湿度の管理と、記録・文書化の考え方

GDPガイドラインは、温湿度管理を品質の維持につながる基本として扱い、温度管理が必要な医薬品については、温湿度の記録とその確認、逸脱時の取り扱い、施設・機器の管理を含む項目で整理しています。実務上は次のような考え方で整理できます。

  • 管理する温度の定義。まず、その医薬品がどの温度帯を要するかに対応して、保冷庫の設定温度とその許容範囲を決めます。機器メーカーが温度設定の幅を公表している場合(例:薬用保冷庫の2~14℃等の公表仕様)、その仕様と設置環境の季節変動を確認します。
  • 記録の連続性。手動による紙面記録に加え、ログデータを自動で残す装置が増えてきています。PHC株式会社の薬用保冷庫やモニタリングシステム「LabAlert PRO」は、クラウドサーバーを使って温度やCO2濃度をモニタリングできるとして公表しています(PHC株式会社 LabAlert PRO)。
  • 逸脱時の取り扱い。温度から逸脱した場合、記録を残して原因を調べ、品質の再確認を行ってから使用の可否を判断するという手順が一般に整理されています。ただし本サイトは品質判断の助言を行いません。個別の判断は厚生労働省・各自治体の指導と、添付文書の記載で確認してください。
  • 文書化と責任。ガイドラインは文書化を求めており、記録された温度データは「その医薬品がどう管理されてきたか」の証拠として保持されます。紙面とシステムの組み合わせで記録を継続している薬局も多く、ハイブリッド運用が実用化しています(例:手書きの薬局管理簿+クラウドの温度履歴)。

どんな事業者が何を確認するのか

GDPガイドラインの項目の一部は、あらゆる立場の品質管理につながる共通の枠組みですが、立場によって確認する範囲が違います。

[PR]

製造販売業者・卸売販売業者

流通の主要な立場として、卸売販売業者(医薬品卸)は倉庫・車両・地域配送を担い、温度管理が重視されます。ガイドラインは温湿度管理を中心に、施設・機器・文書・職員・委託業務を含む網羅的な範囲を扱っており、配送まわりでの温度記録の保持と転送は卸の日常業務になっています。

保険薬局

薬局には、受け取った医薬品をどの温度帯で保管するかを管理し、冷所・常温の区分を守って患者に渡すという現場の確認が求められます。薬局側では保冷庫・庫内温度の管理、および一包化等の調剤の後段の管理に責任があります。薬局側の品質確認に機械がどこまで応えるのか(調剤の監査支援装置や一包化監査機)という問いは、【比較表】自動調剤ロボット・一包化監査システムで整理しています。

機器メーカー

機器メーカーは制度で要求される「温度の保持と記録」を具体的な装置として提供します。薬用保冷庫・温度データロガー・クラウド監視サービスを横並びにして見ると、各社で温度の記録方法や監視の範囲が異なります。こちらは【比較表】医療用保冷庫・温度管理機器メーカーにまとめています。

制度を整理するときによく確認される論点

「冷蔵」という語を表にどう書くか

添付文書に冷蔵(2~8℃等)の保存条件で案内される医薬品は、薬局用冷蔵庫の公表資料や現場の温度管理で頻繁に見られます。ただし本ページは、温度帯を一般に広く知られている範囲で表記するに留め、個別の医薬品の保管条件の判断は行いません。

GDPガイドラインは必須の規制か

GDPガイドラインは「ガイドライン」という形式で示された文書ですが、PIC/S GDPに準拠した国内の考え方として流通品質の方向を示す資料になっています。個別の判断の前に、該当条文と厚生労働省の公表資料をご確認ください。

温度記録は何年以上残すのか

文書化まわりの保存期間は、製造・流通・調剤の各文書でそれぞれ定められ、さらに会社の規定により重なります。本サイトではその数字を一律に書くことはせず、個別の規則と企業内規を確認してください。

まとめ

医療用コールドチェーンが制度で支えられるのは、「温度を維持する」装置と、「温度が維持されたことを示す」記録のセットです。GDPガイドラインはこの二つを一つの枠組みに置いた文書であり、日本薬局方・施行規則の温度区分は現場で容易に参照できる語彙を提供しています。次のステップは、機器と監査システムの比較で実装のされ方を確認することです。

本サイトは医療用コールドチェーン・調剤機器の業界を公開情報から整理したものであり、医薬品の使用・保存・調剤に関する助言ではありません。制度・温度管理の基準は厚生労働省・各自治体・メーカーの公式情報をご確認ください。