ニュースの概要
NaturalRefrigerants.comに「Bfresh」という事例が掲載された。同サイトは、二酸化炭素(CO2)、アンモニア、プロパンなど、フロン類に頼らない自然冷媒の導入例を集めた情報源である。ただし、掲載ページから読み取れる情報は限られており、個別の数値や仕様をここで断定することは避ける。そこで本稿では、食品小売の冷凍冷蔵設備を自然冷媒へ切り替える流れの一事例として位置づけ、その意味を考える。冷媒は目立たない部品に見えるが、店舗の電気代、法規制への対応、将来の改修費に直結する。見えにくい設備の選択が、食品流通の収益と環境負荷の両方を左右している。
引用元: Bfresh(NaturalRefrigerants.com)
分析・見解
冷媒の選び方が店舗の十年を左右する
スーパーの冷凍冷蔵ケースは、店舗の電力消費のおよそ3〜5割を占めるといわれる。空調や照明より大きな比重である。その心臓部にあたる冷媒が何かによって、電気代も、点検の手間も、将来の規制リスクも変わる。
従来使われてきたR404Aなどのフロン類は、地球温暖化係数(=CO2と比べて何倍温暖化に効くかを示す数字)が約3,900に達する。一方、CO2冷媒は1である。配管から少し漏れただけでも、影響の桁が違う。
自然冷媒が広がる三つの背景
一つ目は規制である。欧州ではFガス規則の改正により、高い温暖化係数のガスを段階的に減らし、2050年までに使用をなくす方針が示された。米国もAIM法で、HFC(=代替フロンの一種)の生産と消費を2036年までに85%削減する道筋を決めている。日本もキガリ改正に沿ってフロン排出抑制法を運用しており、方向は同じだ。
二つ目は機器コストの低下である。CO2冷凍機は欧州の食品小売で数千店規模の実績ができ、部品も量産されるようになった。三つ目は、投資家や取引先からの脱炭素への圧力である。冷媒の漏えい量は、店舗の温室効果ガス排出を示す際に避けて通れない項目になった。
技術面で残る壁は設備の複雑さ
自然冷媒は万能ではない。CO2は外気温が高いと効率が落ちやすく、暑い地域では、エジェクター(=膨張時のエネルギーを回収する装置)や並列圧縮といった追加の工夫が要る。プロパンは燃えやすいため、一台あたりの充填量に上限があり、小型の独立ケースに向く。アンモニアは毒性があるので、売り場ではなく機械室や大型物流施設で使うのが基本だ。
要するに、冷媒そのものより、店の広さ、気候、保守できる人材の組み合わせで答えが変わる。
事例の読み方は数字より前提条件にある
Bfreshのような事例を読むとき、最も注意したいのは「何が削減されたか」より「どんな条件で達成されたか」である。外気温、店舗面積、改装か新築か、保守会社の経験によって、同じ冷媒でも結果は大きくぶれる。
独自の視点を一つ挙げる。冷媒の切り替えは環境対策に見えて、実は在庫ロスの対策でもある。冷却が安定すれば、生鮮品の廃棄が減る。電気代の削減額より、廃棄削減による粗利の改善のほうが大きくなる店舗も十分ありうる。事例を評価する際は、エネルギーだけでなく食品ロスの数字が示されているかを確認したい。
ビジネスへの影響
改装のタイミングに合わせて判断する
冷凍冷蔵設備の寿命はおおむね15〜20年である。更新時期の近い店舗は、次の機器を何にするかで、その後の運用費が決まる。規制が厳しくなるほど、旧冷媒の補充費用は上がりやすい。使い続けるコストも、見積もりに入れておくべきだ。
まず自社の全店舗について、冷媒の種類、充填量、機器の年式、年間の漏えい量を一覧にしてほしい。この棚卸しだけで、優先して替える店舗が見えてくる。
初期費用ではなく十年の総支出で比べる
自然冷媒機は、導入時の価格が従来機より高くなることが多い。だが、電気代、冷媒の補充費、漏えい点検の義務対応、補助金の有無を並べると、差が縮まる場合がある。見積もりは、最低でも十年分の総額で比較したい。
補助金は年度ごとに条件が変わる。申請の締め切りが改装計画より先に来ることも多いので、早めに窓口へ確認するとよい。
保守体制を契約前に確かめる
意外に見落とされるのが、故障時の対応力である。CO2機やプロパン機を扱える技術者は、地域によってまだ少ない。契約前に、駆けつけ時間、部品の在庫、保守員の資格を確認してほしい。
まず一店舗で試し、電気代と廃棄量を半年から一年測ってから広げる方法が現実的だ。小さく始めて数字を残せば、次の投資判断の根拠になる。
